この記事では、懸垂下降の基本的な手順を紹介します
やり方はそれぞれありますが、基本は同じです
今回はオーソドックスな、ビレイデバイスで下降します
こんにちは、山男ブロガーのみずきです
自衛官だった頃に、懸垂をやりまくっていましたが
今回はそれと別の懸垂です
チンニングではなく、ラペリングのお話です!
ちなみに自衛隊ではリペリングと呼びます
歩きの登山から一歩ステップアップすると
ほぼ確実に使うのが懸垂下降の技術です
ラペリングともいいます
難しい技術ではないのですが、失敗すると大事故になります
どんな時も確実に出来るよう練習しましょう
Table of Contents
支点の種類
ラペルリング
ラペルリングは代表的な支点です
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/支点_ring.jpg)
写真の、赤いカラビナがかかっているリングです
この輪にロープを通します
カラビナ等を残置することなく降りれます
岩場によくあります
似たようなもので、リングボルトがあります
大抵のリングボルトは古く、強度も不明なので使わないようにしましょう
どうしても使うならバックアップを取りましょう
ちなみに写真のカラビナは俗に言う残置カラビナ、錆びついた輪っかがリングボルトです
立木
沢登りやアイス、アルパインでよく使います
枯れてないこと
最低15センチ以上の太さがあること
安定した場所に立っていること
が条件です
崖っぷちに生えている木は太くても要注意です
確実に根が張り、安定しているものを選びます
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/8A4B3D67-221C-49EA-89C1-941DC891C0DB_1_105_c.jpeg)
岩
これも使うことが多いです
ロープ回収の際にスタックすることもあるので、工夫がいります
長めの捨て縄を使うこともあります
残置カラビナ等
岩場によくあります
残置カラビナの状態(腐食がないか、支点は強固か)を確認して大丈夫そうなら使います
よくあるアルミハンガーやハーケンに直接ロープをかけるのはNGです
どうしてもそこしかない場合は、カラビナやスリングを残置します
勿体無いですが、命には変えられません
残置カラビナ
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/EC74FD74-DB50-4416-B015-CB03389D19DE_1_105_c.jpeg)
下降に使う器具
ラペルデバイス
エイト、ATCタイプ、グリグリなど、いろいろあります
左から順に、HMSカラビナ、エイト管、ATCタイプ、グリグリ
カラビナだけで降りることも出来ます
今回使うのは左から3番目、ATCタイプの器具です
アパーチャータイプと言うらしいです
ちなみに、写真に写っているものはトランゴのムーアです
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1208.jpeg)
HMSカラビナ
上の画像にあるカラビナは全てHMSです
ラペルデバイスとセットで持ちます
スパインと言われる部分が広く
洋梨型をしているのが特徴です
ロープの流れがよく、ロープワークには必須のカラビナです
大きめのものが扱いやすいです
また、反転防止機構の付いたものが良いです
プルージックコード
φ7mmのロープで自作する、と言うのが昔ながらの手法ですが
メーカーから出ている既製品も多くあるので、そちらを使った方が安心です
オーバルカラビナ(丸いカラビナ)とセットで携行します
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1297.jpeg)
プルージックロープは懸垂のバックアップ、登り返し用に必要です
バックアップとは、万が一手を離してしまっても落ちない為の保険です
下降先の状況が分からない
空中にぶら下がる箇所がある
先頭で降りる
と言う場合に使います
僕はスターリングのプルージックを使っています
φ6mmくらいがロープとの相性良さげです
太いと効きが悪かったりします
ロープセット方法
リングへの通し方
基本の通し方です
リングにロープを通して結びます
この時、ロープを落とさないようにハーネスや支点に仮止めしておきます
ロープ同士は、オーバーハンドノットで結びます
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1210.jpeg)
結び方
いろいろ方法はあるのですが、手軽で回収しやすいオーバーハンドが良いです
オーバーハンドノットを2回結びます
この時、ロープの結び目はラペルリングの下側に来るようにセットします
末端は40㎝以上残します
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1211.jpeg)
ダブルロープの場合は、反対の末端も同じ要領で結びます
必ず、2本まとめて結びます
不意のすっぽ抜けを防ぐことが出来ます
下降手順
セルフビレイを取る
下降点に着いたら、まずはセルフビレイを取ります
何より先に自己確保です
セルフビレイを取ってから作業に移ります
可能なら、作業の邪魔にならない位置に取れると良いです
いろいろ経験しているうちに慣れてきます
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1209.jpeg)
ロープをセット
ラペルリングにロープを通します
結び方は先述の通りです
ロープ長の真ん中をラペルリングに持ってきます
バックアップのセット
バックアップは、先頭で下降する場合によく使います
ロープをセットしたらプルージックを付けます
ロープ2本にプルージックを巻き、ハーネスのビレイループに繋ぎます
僕はマッシャー結び(オートブロック)を使います
下の写真はマッシャーです
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1212.jpeg)
効きを確認
プルージックを巻いたら、必ず効きを確認します
支点近くまでプルージックを引き上げ、セルフビレイの荷重を抜きます
↓↓張っている荷重をロープに移します
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/ラペル手順1.png)
↓↓プルージックが効き、ロープに荷重が移りました
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/ラペル手順2.png)
セルフから荷重が抜けた状態で、ゆっくりプルージックに加重します
ロープに荷重が移り、流れが止まればOKです
滑るようなら巻き直します
ビレイ器を付ける
次にビレイ器を付けます
まず、ロープの荷重を解くためにセルフビレイに加重します
先ほどのプルージックを下げていけば自然とセルフに荷重が移ります
荷重が抜けたらプルージックをさらに下げて、ロープにたるみをつくります
たるみが出来るので、そこにビレイ器をセットします
↓↓セルフに荷重を移し、ビレイ器をセット
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1215.jpeg)
プルージックより上にビレイ器を付けます
このときビレイ器は、セルフビレイコードに付けます
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1216.jpeg)
付けたら、確実にカラビナをロックします
効きを確認
ビレイ器を支点に近づけ、セルフとプルージックに荷重がかかっていないことを確かめます
ブレーキ側の手を握りながら、ゆっくり加重します
ビレイ器の効きが良ければOK
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1218.jpeg)
最後に、バックアップ含めた全体の効きを確かめます
バックアップが効いていれば、手を離しても止まります
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1221.jpeg)
セルフビレイを外す
セルフビレイを外して下降に移ります
ブレーキ側の手は絶対に離さないように、片手で作業するのが原則です
↓↓必ずロープを抑えておく
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1224.jpeg)
↓↓片手でセルフビレイを解除する
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1220.jpeg)
外したセルフビレイのカラビナは、ロープの間にかけます
こうする事で、すっぽ抜けを防ぎます
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1222.jpeg)
もしビレイ器が抜けても結び目で止まります
2本をまとめる、と言ったのはこの為です
カラビナやエイト管で下降する際も有効です
↓↓万一外れても、このように結び目で止まります
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1260.jpeg)
下降の注意点・コツ
降りる時はハーネスに体重を預け、壁を歩くように降ります
バックアップ使用時は、プルージックを操作することで下降します
降りる時はプルージックを握る
止まる時は離す
慣れないと怖さで握ってしまう場合もあるので
必ず地上で動作に慣れておきましょう
↓↓プルージックを握って少し下げると下降できる、離せば止まる
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1223.jpeg)
飛ぶのはNGです
支点に衝撃荷重がかかります、静かに降りましょう
ロープは熱に弱いので、早く降りるのもNGです
下降ルートは、地面に対してまっすぐ取ります
下手にトラバースすると振られて壁に激突します
停止・登り返しシステム構築
仮固定(ミュールノット)
バックアップが効いていれば停止しますが
作業をする場合はミュールノットで留めます
まず、ビレイ器を片手で抑えてロープの流れを止めます
↓↓利き手の反対手で抑えると、この後の作業が楽です
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1226.jpeg)
ビレイ器から手を離さずに、片手でミュールノットを作ります
↓↓ロープをカラビナに通します
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1227.jpeg)
↓↓ロープを通して出来た輪に手を通します
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1228.jpeg)
下側のロープを掴み、輪の中に通します
↓↓ロープを掴んで・・・
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1230.jpeg)
↓↓輪をくぐらせると、ミュールノットです
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1231.jpeg)
結び目を締め上げたらミュールノットの完成です
この時、上記写真のように端末を多めに取ります
この長めに取った端末を使い、オーバーハンドノットでミュールを留めます
↓↓ビレイ器の上にオーバーハンドノットを結びます
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1232.jpeg)
プルージックを巻き、ハーネスへ連結
仮固定が出来たら手を離せます
続いてロープの上方にプルージックを巻き、
オーバルカラビナでハーネスのビレイループと連結します
長さは、目一杯伸ばして手の届く高さに調整します
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1271.jpeg)
↓↓手を伸ばして、プルージックに届くくらいの高さに調整します
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1272.jpeg)
下降用のバックアップを外す
続いて、下降時に使っていたバックアップをハーネスから外します
仮固定が出来ているので外すことができます
外した器具は、立ち込み用のプルージックに使います
↓↓仮固定が効いているので
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1273.jpeg)
↓↓バックアップを外すことができます
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1274.jpeg)
立ちこみ用プルージックを巻く
外したバックアッププルージックを使います
プルージックコードと、スリングをオーバルカラビナで繋げます
こちらは、足で乗り込んで立ち上がるためのプルージックです
ハーネスとは連結しません
60㎝くらいのスリングがおすすめです
ビレイ器の下側に付けます
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1275.jpeg)
ビレイ器を外す
ハーネス連結のプルージックに加重します
すると、ビレイ器の荷重が抜けます
荷重が抜けたらビレイ器を外します
また下降で使うので、ビレイループにつけておくと楽です
ビレイ器を外したら、登り返しシステムの完成です
↓↓全体図
![](https://mizu1228.com/wp-content/uploads/2024/04/IMG_1276.jpeg)
登り返しの要領
プルージックを交互に上げてシャクトリムシのように登ります
まず、ハーネスに体重を預けます
足のプルージックがフリーになるので、上にずらします
足用のスリングに乗り込みます
そのままスリングに立ちこみます
体幹を駆使して、バランスよく立ち上がります
すると、ハーネスのプルージックが緩むのでそれを上げます
目一杯腕を伸ばしてプルージックをあげ、再びハーネスに加重します
また足のプルージックを引き上げ、それに乗り込む
という動作を繰り返して、懸垂の支点や安定する地点に登り返します
空中懸垂でこれをやるとかなり疲れます
焦らずゆっくり登るのがコツです
登り返したら、ビレイ器を付け直して下降します
登り返しシステムの解除は、セットの逆順ですが、慎重に行いましょう
外す前に必ず、セルフビレイを取ります
手順まとめ
下降手順
- セルフビレイを取る
- ロープをセット
- バックアップのセット
- 効きを確認
- ビレイ器をつける
- 効きを確認
- セルフビレイを外す
停止・登り返し
- 仮固定
- プルージックを巻き、ハーネスへ連結
- 下降用のバックアップを外す
- 立ちこみ用プルージックを巻く
- ビレイ器を外す
- プルージックで登る
最後に
ここまで懸垂下降の手順を書いてきました
ですが、いきなり実践するのは危険です
講習会に参加、山岳会に入るなど
必ず、経験のある指導者に教わりった上で
手順に習熟してから取り組んでくださいね