冬期乗鞍岳のコースガイド・必要装備

この記事では、北アルプス乗鞍岳の冬季コースを紹介していきます

バックカントリーだけでなく、冬季登山でも魅力的な乗鞍岳

コースガイド、装備や注意点も紹介しつつ

厳冬期の3000mに立つ感動の手助けになればな、と思います

今回は小屋泊前提ですが、日帰りコースもほぼ同じ道のりです

(ご注意)

当記事に掲載されているコースを歩く際は自己の責任でお願いいたします

自然のコンディションは1日として同じ時はありません

ご自身の体力、経験、力量、天候等を総合的に判断した上での山行をお願いいたします

入山の際は必ず、登山届を提出の上、現地の情報を確認してください

こんにちは、山男ブロガーのみずきです

冬は一番好きです

冬山は厳しく恐ろしい世界ですが、

その分、非日常的な感動を与えてくれると思います

今回紹介する乗鞍岳もそんな美しい冬山の一つです

何度も登っていますが、いつも違う感動を与えてくれます

アクセス・駐車場

東京方面から来る場合、最寄りは松本ICです

そこから新島々・上高地方面へ車を走らせ、途中の乗鞍高原分岐を進みます

Mt.乗鞍スキー場をナビにセットすると良いです

駐車場は主に、休暇村側とやまぼうしリフト側があります

僕が行く際はいつもやまぼうし側です

やまぼうし駐車場は今季から、車中泊可能な有料エリアと無料エリアに分かれておりました

更衣室もあるので、いつもそこで着替えたり物の準備をさせてもらっています

必要装備

乗鞍岳は比較的アクセス容易な3000m峰として有名です

他の3000級と比べると確かにアクセス容易で、冬も比較的登りやすい距離感です

とはいえ、冬は想像を超える寒さと厳しさです

ひとたび降り出せば視界はみるみるうちに消え、深雪のラッセルが待っています

気温も氷点下10度を下回ります

上部は風も強く、肌を出しているとすぐに感覚が消えます

厳冬期の高山であることを認識した装備が必要です

服装

冬山一般の服装

・ハードシェル

・ミドルレイヤー

・インナー

・防寒着(ダウンなど)

ハードシェルなどの冬山一般装備は必須です

高機能のインナーを着て、その上にミドルウェア、ハードシェルを重ね着します

休憩用にダウン等の防寒着も持ちましょう

森林限界を超えないうちは、ミドルウェアで行動する場合もあります

オススメのインナーはファイントラックのドライレイヤーウォームシリーズです

汗冷えが少なく暖かいです

ベーシックは3シーズン用で、ウォームは厳冬期用と言った感じです

僕の場合、厳冬期以外にウォームを着ると暑いので、12月~2月くらいにしか着ません

その他の季節はベーシックを着ています

インナーの性能が快適さや、時に命をも左右するので妥協はできません

ちょっと高いですが・・・

ファイントラック ドライレイヤーウォーム

ヘルメット

ヘルメットも持ちましょう

スキーやボードの人はヘルメットを必ずつけると思いますが

登山者も付けた方が安心です

特に、上部へ行くなら雪崩や滑落のリスクが上がります

個人的に、雪山では必ずヘルメットをつけます

滑走する場合は、スキー・ボード規格のヘルメット

登山の場合はクライミング規格のヘルメット

と規格分けがされています

それぞれ、想定する衝撃が違うんですね

僕は、スキー登山をする際はスキー規格のヘルメットをしています

耳当てもあるので暖かいですよ

極端に安いものもありますが、信頼できるメーカーの物を買った方が無難です

登山なら、ブラックダイアモンドやマムート、グリベル・・・

スキーならアルピナやUVEX、GIROなどなど

スキー用ヘルメット


登山用ヘルメット

ビーニー・バラクラバ

ヘルメットの下にかぶるビーニーやバラクラバも持ちましょう

特に、耳当てのない登山規格のヘルメットの場合

ビーニーやバラクラバは必須です

僕は暑くなるので、余程の吹雪でない限りバラクラバを使いません

普段はヘルメットの下にビーニーを被り、耳まで覆っています

暑い時は耳を出して調節します

バラクラバはいつでも出せるように、上着のポケットに入れています

またまたファイントラックなのですが

ファイントラックのメリノスピンバラクラバはオススメです

呼気が抜けやすい構造になっており、ゴーグル等の曇りを軽減します✨

メガネユーザーに特にオススメです!

サイズが小さめなので、大きめを買うのが良いです

僕は頭周り58cmなのですが、このバラクラバのL-XLサイズを使っています

それでちょうど良いか少しピッタリ目な感じです

メリノスピンバラクラバ

冬用グローブ

手袋はアウター・インナー分離式のものがオススメ

予備の手袋も1ペア以上は持ちましょう

紛失防止のリーシュコードもお忘れなく

また、基本的にアウター手袋を着けたまま、全ての作業をできる方が良いです

インナーを濡らすとリスキーです

最低限、アイゼンやワカンの装着はアウター手袋で出来るようになっておくと安心です

スキーやスプリットボードの場合はシールを剥がしたりブーツをいじったり・・・

やることも多いですが、手袋のまま出来るように頑張りましょう

雪山には以下のようなタイプのグローブが良いかと思います

下記リンクはブラックダイアモンドのソロイストというモデルです

僕はモンベルのアルパイングローブを使っていますが、似た感じです

ミトンタイプは保温性が高いですが、操作性が落ちます

慣れが必要です

トリガーミトン(3本指)タイプですと、暖かく操作性もソコソコです

冬季グローブ

着替えなど

靴下と下着の予備も持つと安心です

下着は冬山で着替えることを考えると現実的ではないような気もしますが・・・

万一沢に落ちるなどで全身濡れた際

着替えることができたら良いかも、と考え僕は持ちます

足は汗をかきやすく冷えやすいので、替えの靴下は持ちましょう

着替えは着ているものと同じか、同等程度の物が予備として良いと思います

サングラス・ゴーグル

雪目予防にサングラス、ゴーグルも持ちましょう

余程の強風でない限り、サングラスが行動しやすいです

ゴーグルは強風時に必須です

曇らないゴーグルが良いですね

スキー用の超高級ゴーグルも多々ありますが

僕には高くて手が出ません・・・

僕はモンベルのアルパインゴーグルを愛用しています

値段が安いながら、曇りにくく良品です✨

超高級品と比べた事がないので申し訳ないのですが

普通に滑る、登る分には曇りにくいです

それと、メガネユーザーはメガネ対応品が良いです

滑走者は予備ゴーグルもあると良いですね

あと、日焼け止めも持たないと下山後に後悔します😅

モンベル アルパインゴーグル

必携ギア類

アイゼン・ピッケル

上部へ行くならアイゼンは必須です

肩の小屋より上は基本的にカリカリの強傾斜です

トラバースもあるので、スノーシューやスキーアイゼンでは落ちます

登頂を目指すなら必ず持ちましょう

ピッケルも同様です

山頂を目指すなら必携です

スノーシュー

登山やボードの方はスノーシューも必携です

個人的に乗鞍は、ワカンよりスノーシューがオススメです

コースは雪深いことが多いです

そしてスキー場から行く場合、山頂までずっと広い道を行きます

よって、多少大きなスノーシューでも取り回しに苦労することはほとんどないです

スノーシューはなかなか出番がない道具ですが、ここでは存分に性能を発揮してくれます!

値段は高いですが、山岳スノーシューを選びましょう

MSRやアトラスが有名どころです

安物との違いは登高性能と強度です

僕はアトラスの下の画像にもある、レンジBCというモデルを使っています

大きくて少し重いですが浮力と強度と登高性能は抜群です!

最近はモンベルからお手頃価格でかなり良さげな物が発売されています

これ、今かなり注目しています👀


モンベル アルパインスノーシュー56

MSR ライトニングアッセント


アトラス レンジBC

アバランチギア

冬山で必携のものですね

・ビーコン

・プローブ

・スコップ

ここではあまり深く追及しません

どれも使い方を熟知しておくことが大切です!

別記事で、アバランチギアについて解説しています

ストック

山頂アタック以外はストックが便利です

ラッセルの際もこれがなければ進みません

スノーバスケットの装着をお忘れなく

スキーヤーなら必ず持っているはず

スクリュー式は凍りつくので避けた方が無難です

僕のはスクリュー式なので毎回苦労します・・・

愛着があるので買い換えれないんですよね〜

ビバーク用品

・ツェルト

・バーナー

ツェルト・バーナーは日帰りでも必ず持ちましょう

万が一の際だけでなく、休憩時もツェルトがあるとかなり違います

バーナーも緊急時だけでなく、休憩時に温かいものを飲んだりできます

冬用のガスを持つことを忘れずに

ツェルトはパーティメンバーに合わせたサイズを選びましょう


ツェルト

着火用のライターもあった方が安心です

電子式ではなく、フリント式ライターが山にはオススメです

電子式は高山で着火できません

フリント式は石を回して着火する、昔ながらのやつです


フリント式ライター

保温ボトル(テルモス)

サーモス(メーカー)じゃなくテルモス(総称)です

なぜかそう呼びます

定番はサーモスの山専用ボトルですね

僕はモンベルのアルパインサーモボトル推しです

温かい飲み物を飲むだけでなく、水を凍らせないためにも便利です

厳冬期の北アルプスでは全てが凍ります

ペットボトルの水分などは、15分もあれば凍ります

おすすめは、大きめの魔法瓶にすぐ飲めるくらいのお湯をいれておくことです

沸かしたてだと熱すぎて飲みにくいです

凍傷予防のためにもこまめに水分を摂りましょう

僕は750mlのボトルを使っています

750~1000mlくらいが使いやすいです

その他の必携装備

・ヘッドライト

・スマホバッテリー

・地図、コンパス

・行動食(凍らないものが◎)

・救急品

上記はいつでもどこでも必須ですね

ヘッドライトは乾電池式がオススメです

寒冷地と充電池の相性がよくないです

行動食はチョコが好きです

冬だと溶ける心配がありません

大福も凍らなくて良いですよ✨

ジェル系の行動食は凍って出てこなくなるので、冬はあまり持ちません

でも、ウイダーはあまり凍らないので不思議

糖分入りのジュースも合理的で好きです

カフェインの入ったものは利尿作用があるので避けます

その他

冬といえばダウンジャケットですが

個人的には化繊の防寒着がオススメです

ダウンはコンパクトですが、濡れに弱いです

濡れたらカサが減って保温力が低下します

化繊素材の場合は、多少濡れても問題なし

カサは増えますが、ダウンほど気を遣わなくて良いので楽です

ハードシェルの上から着れるように、大きめのサイズを買っています

休憩中に上から羽織れます

値段も安く、自宅での手入れも楽です!

興味のある方は一度試してみてください✨

愛用はモンベルのサーマラップシリーズです

モンベル サーマラップシリーズ

コースガイド

Mt.乗鞍スキー場から、ツアーコースを登り、剣ヶ峰

もしくは位ヶ原山荘を経由して剣ヶ峰へ向かうコースを紹介します

小屋泊の場合は山荘経由

日帰りの場合は直接剣ヶ峰へ

とする事が一般的かと思います

コンディションに合わせて行動してください

ゲレンデ

スタートはMt.乗鞍スキー場から登ります

やまぼうし側か休暇村側から登れます

僕は毎回やまぼうしです

早朝に出る場合はゲレンデの端を登ります

所々に看板があるので、それに従います

早朝はゲレンデ整備をしているので、係の指示に従いましょう

使わせてもらっていることに感謝です

リフト運行後は、リフトを乗り継いでカモシカリフトの終点を目指します

2時間かかるゲレンデハイクを一瞬で終わらせることができます

ゲレンデトップからツアーコースを目指して歩きます

ツアーコース〜山荘分岐

冬道は地図にないツアーコースを行きます

地図にはないですが、しっかり切り開かれ迷う心配はないです

ゲレンデからツアーコースに向かいます

すぐに急斜面が現れます

開けた斜面を直登するもよし、右手の樹林を行くも良しです

どちらにせよ急なので、ゆっくり行きましょう

ここを登りきれば、ツアーコース1番の急登は終わりです

あとは山荘分岐までゆっくり登ります

山荘との分岐は看板が立っているのでわかりやすいです

雪崩注意の看板、ツアーコース6番の看板が出てきたらもうすぐです

この先が位ヶ原です

山荘分岐〜位ヶ原山荘

コンディションが悪い場合は上に行かずに小屋を目指す方が良いです

日帰りの場合は撤退も視野に入れます

この先の剣ヶ峰方向は風も強まります

また、看板の先の剣ヶ峰方向は雪崩斜面です

降雪中や直近に多量の降雪がある場合は迂回か撤退をオススメします

位ヶ原山荘に向かう場合は、山荘分岐を北方向に進みます

山荘の主人が付けてくれた赤布が木に付いているはずなのでそれをたどります

赤布を見失った場合は、乗鞍スカイラインを探します

道路上に出れば、それを忠実に辿るだけです

道路上にも小屋の主人が赤布を差してくれています

しばらく進むと山荘に着きます

スキーの場合、シールを剥がして滑ると早いです

徒歩の場合は30~40分くらいです

冬季は裏口から小屋内に入ります

山荘分岐〜肩の小屋

分岐から先の急斜面は雪崩地帯です

過去に事故も起きています

ここを登る場合は、凹状地形に入らず左手の少しでも高くなっている樹林沿いに登ります

きつい斜面ですが、休憩せずに一気に登りましょう

上図の赤線で囲んだんだ場所が雪崩地形です

位ヶ原から吹く風により、道路下部に雪が吹き溜まります

ここを剣ヶ峰へ登る場合は、青矢印で示す尾根を登るのが雪崩地形を回避する一つの手です

危険が無いということではないので、降雪量や雪質には細心の注意を払ってください

 

雪崩地帯の急斜面を登り切ると広い雪原に出ます

雪原へ出ると、遮るものがなくなり強風にさらされます

風が強いせいか、雪が固く歩きやすいことが多いです

キレイなシュカブラを眺めながら雪原を歩きます

晴れていると、青空に白銀の乗鞍岳が臨めます

剣ヶ峰と摩利支天の鞍部に肩の小屋があります

まずはそこを目指します

肩の小屋に着いたらアイゼンを履き、ピッケルを出します

肩の小屋〜剣ヶ峰

肩の小屋から上部は傾斜が強く、クラストしています

そのため、アイゼン+ピッケルで登ります

スノーシューや板は肩の小屋にデポしていきましょう

厳冬期に山頂から滑走するのは厳しいんじゃないかな、と思います

カチカチでも楽しめる人は良いのですが・・・

登りは稜線を歩きます

冬の特権として、普段は登れない朝日岳に登れます

余裕がある人は立ってみるのも良いですよ✨

朝日岳と剣ヶ峰の間は遮る物のない強風地帯です

ビクトリーロードですが、油断せずに歩きましょう

山頂に着くと360度の大展望

一度見たら忘れられない絶景を楽しんでください✨

下山

山頂からの下山は来た道を戻ります

某冬山ガイドブックには、東尾根を下る

と書いてありますが、やめた方がいいです

かなりの急斜面+カチカチのアイスバーンです

少なくとも厳冬期はやめた方が良いかと思います

小屋の主人も、常連さんも「その道は無いな。」と口を揃えて言っております😅

春の滑走は楽しめることが多いようです

山頂から位ヶ原山荘へ向かう場合は山荘分岐の雪崩地形の中心を通らず、

迂回して樹林の中を行くと安心です

位ヶ原山荘から山頂を目指す場合

山荘から登頂を目指す場合、大きく2つのルートに分かれます

・山荘分岐まで戻ってツアーコースから登る

・位ヶ原の斜面を登る

1番目の、分岐まで戻るコースですが

こちらは先ほど書いた項目で紹介した通りです

コンディションをよく確認して登りましょう

2番目のコースの方が比較的安全かと思います

こちらも、某冬山ガイドブックに掲載の登高ルートですが

ガイドブックよりもさらに左手、樹林の中を進みます

漏斗上のオープンバーンになっており、ひと目見てわかる雪崩地形

上部は雪庇が発達しやすく、吹き溜まりも形成されやすいです

そんな開放斜面を登るのは高リスク!

開放斜面は歩きやすそうに見えますが、頑張って樹林を進みます

上図赤線のあたりが上りやすそうですが、雪崩斜面

青線のあたり、樹林の中を登るのが無難です

樹林はかなりの急斜面です

ここが1番の踏ん張りどころですので、ゆっくり確実に登ります

最後の乗鞍スカイラインへの乗り上げが一番きつい!

なお、この道は小屋の談話室にも説明が貼り出されています

お泊まりの際はぜひ確認して、ご主人からも情報をもらっておくと良いです

乗鞍岳の魅力

僕は乗鞍岳に、夏・冬と何度も登っています(秋と春はないですが・・・)

スノーシューでも来たし、山スキーでも来ています

夏は手頃に登れる3000mとして人気です

また、自転車で登れる最高地点でもあるので、ライダーたちにも人気です

冬は極寒で厳しいですが、一際美しい表情を見せてくれます

時に信じられないほどのラッセルを強いられる山域でもありますが 笑

大晦日に仲間と9時間かけて、位ヶ原山荘までラッセルしたのは良い思い出です✨

乗鞍は他の山に比べて多彩な楽しみ方をできる山だと感じます✨

冬季登山、スキー、ボード、自転車、ランニング

自分なりの楽しみ方を見つけられます

そして、位ヶ原山荘や肩の小屋といった山荘も魅力の一つ

冬季は位ヶ原山荘だけですが、夏は肩の小屋などもオープンします

また、北アルプスの展望台でもあります

山頂からは焼岳に穂高や槍などなど、北アルプスの山々を見渡せます

北アルプスの主脈から少し外れた乗鞍だからこそ、

場所によっては静かな山旅を味わうことができます✨

一度来たらまた来たくなる

そんな不思議な魅力がこの山にはあります!

最後に

冬季乗鞍岳のコースと必要装備をお伝えしてきました

コンディションが良ければ広大な雪原と3000mの景色を見ることのできる山です

しかし、一度荒れれば日本でも有数の過酷な環境になります

事前の装備確認をしっかりとすることはもちろん

最低でも1週間くらい前から付近の降雪情報などを入手しておきましょう

当日にコンディションが悪ければ登らない、というのも立派な判断です

天気が悪くても麓のスキー場や温泉で乗鞍高原を楽しむことはできます

余裕のある範囲で、乗鞍を楽しんでください✨

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